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コア東京2015.2月号 東武鉄道浅草駅・松屋浅草店

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2012年「東京駅丸の内駅舎」が戦前の姿に保存・復元されたことには誰もが驚き、戦前の姿なんてほとんど人々の記憶には無いにもかかわらず「やっぱり東京駅はこうでなくては」と多くの人に思わせることに成功している。時を同じくしてここは浅草、もう一つの建てものが戦前の姿に復元された、それが「東武鉄道浅草駅・松屋浅草店」である。昭和6年に駅舎とデパートが合体した巨大複合施設として竣工、設計者はその後大阪の「南海ビル・高島屋難波店」などを手がけた久野節という建築家。電車が隅田川の鉄橋を渡り、大きなカーブで車輪を軋ませながらルネッサンス調の建てものに吸い込まれて行くそのダイナミックな姿に、戦前の人々は度肝を抜かれたに違いない。しかしその後高度経済成長期が終わりを告げようとしていた1974年に、その優美な様式建築の外観はアルミパネルで覆われてしまった。外壁の剥落などを考慮した安全対策とも考えられるが、一言で言えばまだ“未来都市”なんて考え方を指向していた時代に「古くさい、最新の流行の姿に」というだけで改変されたのは間違いない。
 東京駅と違い、この復元された駅舎はそれほど大騒ぎされることもない。戦後再建された「浅草寺本堂」よりも古いってことをわざわざ自慢するわけでもなく、当然のごとく凛としてそこに建ち、今日も働き続けている。


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OCM一級建築士事務所 台東区浅草橋5−19−7 大島健二
by ocm2000 | 2015-02-12 16:09 | □建築イラスト
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