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「加古川山手の家」竣工

「加古川山手の家」が竣工しました。

設計:OCM
構造設計:S-cube
施工:船橋建設(株)
写真:OCM写真部

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北東側の道路に面した70坪の敷地です。

一般的には道路側(北側)に建物を寄せて建て、南側に庭を設けますが、この住宅は「中庭をつくり住空間は中庭に対して開く、建物を南側に寄せて、北側に対しては閉じた表情を持たせ、大きな駐車スペースを設ける」という選択をしています。

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もともと建て主の実家であった敷地、ここに暮らしていたことで、この敷地や周辺環境の特長を、建て主は知り尽くしています。

・駅まで徒歩25分、車は家族一人一台の環境、車の出し入れのしやすさが重要。
・敷地奥は南側と呼んでるが、少し西側に方位が振れているので、夏の午後など厳しい西日に晒される。
・住宅街は、一歩出ると田園地帯が広がり、自然環境には恵まれている。あえて手入れの大変な庭を自宅に設ける必要はないのではないか。
・生活の容態・プライバシーを道路側に見せる必要はないのではないか。

などなど


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外壁と同系色の玄関扉。
非象徴的な扱い、機能のみに徹しています。

「表札も住居表示も必要ない、ポストもわかりにくくて良い、居留守は当たり前」というのが昨今の流れです。

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平家のLDK部分と2階建個室群に挟まれた中庭。
画面左側が南ですので、東南からの陽光を中庭に採り入れ、階段の屋根の傾斜に沿って、西日を遮ります。



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天井高さ3.5mの玄関土間、4m続く奥行き45cmの玄関収納。
冬の午後、中庭から奥まで差し込む柔らかい陽光に導かれます。


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床はラフな風合いのオーク材フローリング(IOC:カンヌコムサ)。
建具の面材はタモの板目、いつもは柾目ですが今回は床の風合いに合わせています。

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天井は玄関から一気に1m以上低くなり、高さ2.35m。
ギャラリー的に使用されるか、日向ぼっこのスペースか。
冬、一番心地の良い場所、名もなき空間。

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暗くて高いところから、明くて低いところへ。
均質でない空間の質。

安価な既製品を使い、難しいディテールは用いなくても、汎用的な技術で、空間の質は設計できます。

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中庭の東側に位置するLDK、天井の高さは2.7mです。

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日常生活に直射日光はあまり必要ありません。
一日中、中庭の柔らかい光を感じ、カーテンもブラインドも必要のない暮らし。

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天井まである「見せる本棚」、大工工事を増やし、家具工事を発生させないようにしています。


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中庭に面した外壁は、一転白い窯業系サイディングを用いています。

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白い外壁、視覚的には室内の延長、光の反射・拡散効果も考慮しています。


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デッキ材、以前はイペ材やウリン材などがありましたが、セランガンバツ材が最近主流になってきています。

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中庭に面したサッシや内部建具の高さは2mと、天井高さとは対照的に低くおさえ、視線の重心を下げるようにしています。

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現在建て主家族に要介護の方はいらっしゃいませんが、将来介護ができるような造作や広さを確保しています。いかにも「介護用にリフォームしました」ではなく、はじめから「広くて快適でかっこいい」としておくべきですね。

「高齢者等配慮対策等級3」に適合しています。

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洗面脱衣スペース。ハイサイドの窓から光を採り入れています。
メンテナンスのしやすい素朴なツーハンドル混合水栓、建て主の要望と、OCMのお勧めが合致しています。

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LDKの脇に設けた、ミシンなどをするスペースです。

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1階の個室、中庭をはさんでLDKと向かいあっています。
家族それぞれのプライバシーを確保しながら、程よい距離感で気配は感じられる作りにしています。


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2階の個室、天井高さは2.6m。
家族構成の変化に対応できるよう、可動間仕切りを設けています。

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このオブジェのような幾何学的形態は「生活」というとても具体的な主題を内包しています。




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【概 要】

竣 工:令和2(2020)年2月

所 在:兵庫県加古川市

地 域:第二種低層住居専用

敷地面積:230.54m²(69.73坪)

延床面積:133.39m²(40.35坪)

建蔽率 :43.55% <60%

容積率 :57.85% <150%

構 造:木造在来工法

施 工:船橋建設/担当:高谷氏

設計時の家族構成:50代夫婦+子供1人


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OCM一級建築士事務所 台東区浅草橋5-19-7 大島健二

by ocm2000 | 2020-02-18 11:18 | 「加古川山手の家」
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